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日外会誌. 91(8): 1040-1043, 1990


症例報告

食道癌術後 HLA 型の homozygous な変化を認めた輸血後 GVHD の1例

千葉大学 医学部第2外科

添田 耕司 , 小野田 昌一 , 神津 照雄 , 奥山 和明 , 小出 義雄 , 磯野 可一

(1989年9月29日受付)

I.内容要旨
72歳の日本人男性の食道癌術後,平穏に経過したが,11病日に発熱,13病日に全身紅斑,15病日に白血球減少,22病日に肺出血が出現し,25病日に呼吸不全と心不全出現し,26病日死亡した.15,21病日のHLA型検査では,homozygousな変化が認められ,19病日の皮膚生検で表皮内リンパ球浸潤とsatellite cell necrosisを認め,輸血後GVHDと診断された.15病日のリンパ球サブセットでは,OKT3とOKT4/OKT8の低値を認めた.剖検では骨髄の低形成,14gと萎縮した脾臓,脾とリンパ節のリンパ濾胞の消失を認めた.輸血後GVHDの原因は,術中の新鮮血輸血であるが,発症誘因は,高齢,高度な手術侵襲,術前放射線療法等と思われた.紅斑出現時,ステロイドスプレー散布により増悪したため,15病日にGVHDを疑い,21病日にも2回目のHLA型を検査することができ,HLA型の変化を確認することができた.他家輸血の際には,保存血でもGVHD誘因に注目する必要がある.

キーワード
輸血後 GVHD, 食道癌術後合併症, HLA 型


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