[書誌情報] [全文PDF] (3677KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 91(6): 718-728, 1990


原著

ヒト乳癌細胞の無血清培養そのホルモン依存性に関する研究及び初代培養への応用

福島県立医科大学 外科学第2講座(主任:阿部力哉教授)

浦住 幸治郎

(1989年6月28日受付)

I.内容要旨
ヒト乳癌細胞の無血清培養を行い,そのE2,Pgに対するホルモン依存性について検討し,更に,本培養法を用いて,ヒト乳癌細胞の初代培養を行った.結果は以下の通りである.
1.E2は,低濃度領域においては,ER陽性細胞の増殖を促進するが,高濃度においては,むしろ,抑制した.この高濃度抑制結果は,ER陰性細胞にも認められた.この抑制効果の発現機序は,ERに優位に結合するTAMの細胞動態と比較すると,TAMのそれに近似しており,このことは,高濃度E2は,TAMのbinding siteに何等かの影響を及ぼしていると考えられた.
2.E2のERへの結合は細胞動態より解析すると,培養24時間で有意にS期が増加しており,比較的短時間の間に結合することが判明した.
3.Pgは濃度依存性に細胞増殖を抑制した.PgRはE2のみでは,誘導されず,その誘導には,他の因子の関与が示唆された.
4.無血清による初代培養は,線維芽細胞の増殖を最小限に留め,上皮細胞のきれいなコロニーを形成した.
5.初代培養細胞は,ERの有無にかかわらず,E2により,増殖が,促進された.このことは,癌細胞のheterogeneityさらには,乳癌のparacrineの増殖が示唆された.

キーワード
human breast cancer cells, serum-free culture, hormone-dependency, collagen-gel matrix, primary culture


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。