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日外会誌. 91(6): 729-740, 1990


原著

99mTc 標識微粒子活性炭の開発と臨床応用

富山医科薬科大学 医学部第2外科
*) 富山医科薬科大学 放射性同位元素実験施設

佐伯 俊雄 , 唐木 芳昭 , 藤巻 雅夫 , 前田 正敏*) , 本田 昻*)

(1989年7月19日受付)

I.内容要旨
乳腺リンパ流解析用製剤,乳腺リンパ節シンチグラフィ用放射性医薬品として99mTc標識微粒子活性炭(以下99mTc-CH44)を開発し,そのin vitro,in vivoにおける安定性と臨床応用の可能性について検討した.99mTc-CH44の作製はEDTA complex法を用いた.調製時の標識率は97.7±2.6%,37℃連続振遍下24時間後の標識率は94.9±2.5%と極めて安定した製剤であった.調製時のpHは2.8で,pHの上昇とともに標識率は低下した.99mTcO-499mTc-CH44からの遊離状態を生体組織のシュミレーションモデルを作製し検討した.結果は,1時間で6.6%,6時間で38%の99mTcO-4が遊離した.リンパ節シンチグラフィでは99mTc-CH44を10羽の家兎foot padに注入し,60分後に全羽の注入側膝窩リンパ節を描出しえた.また,乳腺腫瘍患者では12例の乳腺内に2ml(2mCi,74MBq)の99mTc-CH44を注入したが,60分後に10例の腋窩,鎖骨下,胸骨芳リンパ節の描出像を認め,一症例平均リンパ節描出個数は4.8個であった.25匹のラットを用いてリンパ節の黒染度と放射能との関係よりリンパ流解析を試みた.摘出リンパ節は190個,黒染度は50.5%で黒染,非黒染リンパ節間の比放射能には有意差(p<0.01)を認めた.foot padから膝窩リンパ節を経由して腹腔内リンパ節へ向かうリンパ流は黒染度のみからでは単一ルートしか推定できなかったが,99mTc-CH44を用いることで2ルートのリンパ流の存在が推定された.乳癌患者9例の摘出リンパ節を用いて解析を試みたが,臨床的にもリンパ流のより詳細な解析が可能であることが示唆された.以上より,我々が開発した99mTc-CH44は乳腺リンパ節シンチグラフィを行い得る製剤として,さらに,乳腺リンパ流を詳細に解析できる製剤として,その有用性が確認された.

キーワード
99mTc標識微粒子活性炭, 乳腺リンパ節シンチグラフィ, 乳腺リンパ流, 乳癌, 活性炭


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