[書誌情報] [全文PDF] (5902KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 91(3): 326-334, 1990


原著

Degradable Starch Microspheres 併用 Adriamycin 動注療法の実験的検討(ヒト胃癌移植ヌードラット動注モデルを用いて)

大阪大学微生物病研究所 臨床部門外科

阪本 康夫 , 藤田 昌英 , 太田 潤 , 杉山 龍平 , 杦本 卓司 , 田口 鐵男

(1989年5月12日受付)

I.内容要旨
Degradable Starch Microspheres(DSM)併用によるAdriamycin(ADR)動注の効果増強作用を,ヒト胃癌株(H-154)をヌードラット後肢皮下に移植した動注モデルを用いて,薬理動態と抗腫瘍効果の両面より検討した.薬理動態は,DSM 30mg/kg,ADR 10mg/kgを用いて血漿中ADR濃度の変化と薬剤投与1時間後の腫瘍,心,肺,肝,腎のADR組織内濃度をHPLC法により測定した.ADR 10mg/kg動注(n=4)及びDSM 30mg/kg併用ADR 10mg/kg動注(n=4)の腫瘍内濃度は各々,14.3±9.4µg/g,17.8±10.5μg/gであった.また軽微ながら,全身諸臓器へのADR漏出抑制も認められた.
DSM 30mg/kg動注群,ADR 3mg/kg動注群,DSM 15mg/kg併用ADR 3mg/kg動注群,DSM30mg/kg併用ADR 3mg/kg動注群の抗腫瘍効果を1群6匹を用いて比較した.DSM 30mg/kg動注群の抗腫瘍効果は弱く,DSM併用ADR動注群は,ADR動注群に較べ,強い抗腫瘍効果を認めた.とくに腫瘍血管を完全に塞栓させるDSM 30mg/kgを併用することにより腫瘍縮小効果が得られた.
ADRとDSMの併用効果をさらに高める投与タイミングについてADRとDSMの同時投与法,ADR投与後にDSMを投与する方法, DSM投与後にADRを持続投与する方法の3法の抗腫瘍効果を比較した.3法の中では,同時投与法が最も有効であった.
ADRとDSMの併用動注が強い抗腫瘍効果を示す機序として,DSM塞栓による細胞障害作用・薬剤停滞作用とADRの殺細胞効果が相剰的に作用することが考えられた.

キーワード
Degradable Starch Microspheres, 動注療法, 塞栓化学療法, Adriamycin, ヌードラット


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。