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日外会誌. 91(3): 320-325, 1990


原著

虚血性心疾患を合併する外科手術症例の検討
ーRISKとCABG, PTCAの有効性ー

三井記念病院 外科

下山 嘉章 , 鰐渕 康彦 , 羽田 圓城 , 吉田 和美 , 大谷 五良

(1989年4月27日受付)

I.内容要旨
近年,虚血性心疾患を有する外科領域の手術患者(IHD患者)が増加している.これらの患者のrisk及び既往の血行再建術の有効性に関し検討を加えた.
1983年より1988年迄に行われた外科領域の全身麻酔症例4,679例を対象とし,問診又は心電図によりIHDと疑われたものは161例(3.4%)であった.これらの患者に発生した術後の重篤な循環器合併症について麻酔法,手術時間,手術内容,冠動脈造影(CAG)の所見,血行再建術の有無などを指標として検討した.
IHD患者のうち合併症は8例(5.0%)(MI 5例,心室性頻拍症1例,発作性上室性頻拍症(PSVT)1例,安静時狭心痛出現1例)であるのに対し,非IHD患者のそれは2例(0.03%)(MI 1例, PSVT1例)のみであり,有意に(p<0.01)IHD患者のriskが高かった.麻酔法あるいは手術時間と合併症の発生には関連が認められなかった.手術内容では血管系の手術,緊急手術などに合併症の発生頻度が高かったが,他の手術と比べ有意の差は得られなかった.術前CAG未施行45例中合併症は6例(13.3%)に認め,CAGを施行した116例中合併症は2例(1.7%)のみで,有意に(p<0.01)未施行群のriskが高かった.血行再建術施行55例中1例(1.8%)に合併症を認めたが,血行再建されていない106例中7例(6.6%)に合併症を認め血行再建術の有効性が示唆されたが有意の差は得られなかった.
IHD患者の循環器系合併症のriskは有意に高く厳重な管理が必要であり,術前積極的にCAGを施行し術中,術後管理の指針とすべきで,血行再建を必要とする症例ではあらかじめ再建術を施行するほうがriskは減じると考えられたが,油断をしない厳重な管理が必要である.

キーワード
手術, 虚血性心疾患, 循環器系合併症, 冠動脈造影, 血行再建術


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