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日外会誌. 91(2): 234-245, 1990


原著

門脈圧亢進症における核医学的経脾門脈造影法の臨床的研究

旭川医科大学 第1外科

横山 康弘

(1989年3月8日受付)

I.内容要旨
門脈圧亢進症55例,対照疾患20例計75例に核医学的経脾門脈造影法を施行し検討した.
核医学的経脾門脈造影法では,臨床的に食道胃静脈瘤を有する門脈圧亢進症52例中50例(96%)に側副血行路が描出され,食道胃静脈瘤のない門脈圧亢進症や対照疾患では,側副血行路が描出されなかった.
本法による側副血行路の描出陽性率は,上行性のものでは食道静脈瘤(69%),左胃静脈(85%),短胃静脈(48%),下部食道胃噴門部像(65%),奇静脈の上大静脈入口部像(46%),鎖骨下静脈領域像(25%)などの上行性イメージと下行性のものでは傍臍静脈像(27%),左肋間静脈像(6%),下腸間膜静脈像(17%),胃腎脾腎静脈シヤント像(19%),アランチウス静脈管像(4%)などの下行性イメージであった.また,肝外門脈閉塞症3例は全例遠肝性側副血行路以外に求肝性側副血行路が描出された.これらの成績は経動脈性門脈造影法より勝れていた.
上行性イメージと食道静脈瘤のForm,Location,出血歴などは良く相関し,下行性イメージのみの症例は,出血の危険性は低く,反復性肝性脳症の頻度や肝予備能低下例が高率であった.
上行性イメージのみの症例は,内視鏡的硬化療法に難治性であり再発が多かったが,食道静脈瘤像や左胃静脈のイメージが消失した症例では再発は認められず,核医学的経脾門脈造影法は硬化療法の効果判定にも有用であると思われた.

キーワード
核医学的経脾門脈造影法, 門脈圧亢進症, 側副血行路, 食道静脈瘤, 内視鏡的硬化療法


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