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日外会誌. 91(2): 246-254, 1990


原著

ヒトclass II抗原を標的としたADCCの研究ならびに腎移植臨床における意義の検討

東京大学 医学部第2外科

竹田 泰

(1989年3月8日受付)

I.内容要旨
EB virusを用いヒトの末梢血より自由にBリンパ球由来のlymphoblastoid cell line(LCL)を樹立する手技を確立したことにより,これを標的細胞とし,ヒト血清を用いたADCC assayを検討した.
標的細胞にLCL,抗体にHLA-DRタイピング血清を用いたADCCの検討では,100倍希釈の抗HLA-DR2血清はDR2抗原を有する2種のLCLに対し高いADCC活性を示し,100倍希釈の抗HLA-DR4血清はDR4抗原を持つ2種のLCLに対し高いADCC活性を示した.腎移植臨床例を免疫抑制法別に分け,LCL,HLA-DRタイピング血清を用いたADCC assayにより末梢血のKcell機能を測定すると,アザチオプリン群は20.4±5.6%で健常人群の38.4±3.0%に比較し有意の低値を示したが,シクロスポリン群は0.9±4.2%と極めて低値でアザチオプリン群と比較しても有意に低下していた.
腎移植患者の血清を急性拒絶反応時に採取した血清と,移植後7~10病日の移植腎機能良好時に採取した血清の2群に分け,パネルLCLに対するADCC活性を検討すると,両群問に大きな差はなかった.
腎移植患者において患者血清のドナーLCLに対するADCC活性ならびにドナー末梢血リンパ球に対するCDC活性と臨床経過の検討では,移植直前血清のもつCDC活性が陰性であってもADCC活性が高値であった2症例で急性拒絶反応が生じた.
以上よりLCLを標的細胞としたADCCではclass II抗原であるDR抗原が標的抗原となり,LCLがADCCの標的細胞として優れていると考えられた.また,腎移植の臨床においてシクロスポリンの投与を受けている患者はADCCの抑制が強いこと,移植前患者血清のADCC活性が早期の拒絶反応を予測しうる可能性があることが示された.

キーワード
ヒトclass II 抗原, 腎移植, ADCC (antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity), LCL (lymphoblastoid cell line), K cell 機能


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