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日外会誌. 91(1): 52-61, 1990


原著

胃癌患者の免疫能に関する臨床的研究
―特に末梢血リンパ球の T-cell subsets,Interleukin-2について―

群馬大学 医学部第2外科学教室(主任:泉雄 勝教授)

大和田 進 , 竹下 正昭 , 宮本 幸男 , 泉雄 勝

(1989年3月3日受付)

I.内容要旨
モノクローナル抗体OKT 3,OKT 4,OKT 8,Leu 7,Leu 11,IL-2 receptor(Tac抗原)を用いレーザーフローサイトメトリーで胃癌患者の末梢血リンパ球サブセットの動態を解析した.同時に,CTLL増殖法によるIL-2産生能を測定,胃癌患者の免疫能について検討した.対象は胃癌患者63例で,胃癌取扱い規約による病期分類の内訳はstage I;28例,stage II;6例,stage III;15例,stage IVのうち切除8例,非切除6例であった.
結果:1)PHA幼若化反応はstageの進行により低下した.2)OKT3細胞数,OKT4細胞数及び比率はstageの進行により低下した.3)OKT8細胞比率はstageの進行により増加傾向がみられた.細胞数は,stage IIIで増加した.4)OKT4/OKT8比はstageの進行により低下した.5)Leu 7,Leu 11細胞数及び比率はstage IIIで上昇し,stage IVで低下した.6)IL-2 receptorはstageの進行により変化せず,IL-2産生能はstageの進行により低下した.
即ち,胃癌の進行により活性化helper T細胞の低下,cytotoxic T細胞誘導能の低下とsuppressorT細胞の増加が推定され,また,胃癌は抗腫瘍免疫が成立しがたい腫瘍と推定された.胃癌患者の免疫パラメーターとして末梢血リンパ球のモノクローナル抗体によるT細胞サブセットとIL-2産生能の測定は細胞性免疫能陰陽のbalanceを把握するために有用と思われた.

キーワード
胃癌, 細胞性免疫能, モノクローナル抗体, T 細胞サブセット, IL-2


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