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日外会誌. 90(11): 1879-1889, 1989


原著

Ileo-jejunal transposition における消化管ホルモンと小腸粘膜像の組織学的変化に関する実験的研究

東北大学 医学部第1外科

戸田 守彦 , 佐々木 巌 , 内藤 広郎 , 舟山 裕士 , 鈴木 祥郎 , 高橋 道長 , 松野 正紀

(1988年12月19日受付)

I.内容要旨
消化管ホルモンの中でもintestinal adaptationへの関与が示唆されているenteroglucagonに着目し,雑種成犬を対象としてenteroglucagonが高密度に分布する遠位回腸の一部を上部空腸に有茎移植するモデルileo-jejunal transposition (IJT)を作成し,消化管ホルモンの変動および小腸粘膜の組織学的変化について検討を加えた.
モデルの作成は回盲弁より約10cmの部から口側へ小腸の1/4に相当する遠位回腸を切離し,Treitz靱帯から15cm肛門側にて切離した空腸間に順蠕動となるように有茎間置し端端吻合にて再建した.
血漿中enteroglucagon値については, IJT術後は術前に比べ4週, 12週ともに高蛋白高脂肪食の負荷に対し約4倍に達するhyperenteroglucagonemiaが認められた.血漿中のtotal GLIのゲル濾過像ではglicentinに相当する分画で主なピークの形成が認められた.
一方,組織学的検討ではIJT施行後14週において術前同部位に比べ小腸全体にわたる著明な粘膜hypertrophyが認められた.
また,血漿GIP値は術前に比べ, IJT後は食事負荷後90分から150分で分泌反応の抑制を認めた.血漿gastrin値は術前後で有意の変化を認めなかった.
以上のことから, IJTは術後hyperenteroglucagonemiaをきたすモデルであることが確認され,さらにenteroglucagonが小腸全体に対してsystemicに作用するenterotrophic actionを有する可能性が示唆された.

キーワード
短腸症候群, 腸管グルカゴン, ileo-jejunal transposition, 大腸全摘, 小腸粘膜増殖


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