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日外会誌. 90(10): 1697-1705, 1989


原著

2次元電気泳動法により検出されたヒト腫瘍関連細胞蛋白質に関する生化学的ならびに免疫学的研究

慶應義塾大学 医学部外科学教室(指導:阿部令彦教授)

奥田 康一

(1988年11月30日受付)

I.内容要旨
2次元電気泳動法により検出されたヒト腫瘍関連細胞蛋白質,すなわち,腫瘍組織において正常組織に比し増加している細胞蛋白質のうち,82k/6.3(分子量/等電点)および61k/7.5の両蛋白質について,それらのモノクローナル抗体を作成し,生化学的および免疫学的検討を行い,以下の結論を得た.
1.2次元電気泳動像では,82k/6.3および61k/7.5は,ヒト大腸癌組織において正常粘膜に比し増加しており,この2種の蛋白質は胎児消化管組織においても認められ,癌胎児性抗原の一種であることが示された.また,この2種の蛋白質はヌードマウス可移植性ヒト癌株Exp-4,培養ヒト癌細胞株MKN-45,C1,PLC/PRF/5においても検出された.
2.細胞下分画法による細胞内局在では,82k/6.3および61k/7.5は大部分ミクロゾーム分画に回収され,可溶性分画にもわずかに回収されたが,核およびミトコンドリア分画では検出されなかった.
3.82k/6.3,61k/7.5および分子量82kのtransferrin(Tf)と7種のレクチンとの結合反応では,ハリエニシダ凝集素1とダイズ凝集素は61k/7.5にのみ反応し,ドリコスマメ凝集素とコムギハイ凝集素は前2者に反応し,他の3種のレクチンとの反応は3者に共通していた.
4.Exp-4株を用いて2次元電気泳動法により82k/6.3および61k/7.5を分離し,両者を免疫原として,それぞれに対するモノクローナル抗体KG82およびKG61を樹立しえた.これらのモノクローナル抗体はいずれもEIA法においてTfとは反応せず,それぞれに特異性を有することが認められた.サブクラスはいずれもIgM,κであった.
5.KG82およびKG61を用いて,間接蛍光抗体法によりMKN-45,ClおよびPLCの免疫染色を行ったが,いずれも細胞質および膜に反応し,細胞下分画法による82k/6.3および61k/7.5の局在に一致した.

キーワード
2次元電気泳動法, 腫瘍関連細胞蛋白質, 癌胎児性抗原, モノクローナル抗体, 間接蛍光抗体法


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