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日外会誌. 90(10): 1706-1712, 1989


原著

肝硬変ラットにおける創傷治癒障害の実験的研究

東京大学 医学部第1外科(指導:森岡恭彦教授)

槙島 敏治

(1987年8月11日受付)

I.内容要旨
肝硬変症が創傷治癒に及ぼす障害を四塩化炭素による肝硬変モデルをもちいて実験的に確認し,新鮮血漿を投与してその効果をみた.
肝硬変ラットでは創部のリンパ球浸潤数に著明な減少がみられ,創傷治癒の炎症期における障害が確認された.
また創部のコラーゲン量も肝硬変群で有意に低下しており,創傷治癒の増殖期においても創傷治癒が障害されていることが判明した.
創傷治癒の物理的指標としての腹壁および胃壁の耐圧も肝硬変で低下しており,物理的にも創傷治癒障害の存在が確認された.
術後早期の創部におけるリンパ球浸潤数とコラーゲン量および耐圧との間に正の相関が認められたことから,創傷治癒の炎症期に受けた障害が増殖期にも影響することが示唆された.
創傷治癒を改善させる目的で新鮮血漿を術後3日間投与したところ,創部のリンパ球の浸潤数とコラーゲン量に有意な増加がみられ,耐圧には改善の傾向がみられた.
新鮮血漿の投与は肝硬変症における創傷治癒障害の改善に有効であると考えられる.

キーワード
四塩化炭素, 肝硬変, 創傷治癒, 縫合不全, 新鮮血漿


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