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日外会誌. 90(7): 1043-1048, 1989


原著

脾機能亢進症合併肝細胞癌症例に対する脾臓摘出術の臨床的意義
ーとくに肝切除術適応拡大との関連からー

国立がんセンター病院 外科

高山 忠利 , 幕内 雅敏 , 山崎 晋 , 長谷川 博

(1988年8月5日受付)

I.内容要旨
肝硬変合併肝細胞癌症例に対する肝切除術に際し高度の脾機能亢進症を有したため脾臓摘出術(以下,脾摘)を併用施行した20症例を対象に,肝切除後の臨床経過に及ぼす脾摘の影響をとくに血清総ビリルビン値の変動を中心に解析した.
肝切除後のピリルビン値の推移の検討では,肝切除前値が1.0~2.0mg/dlの群(n=11)において,また肝切除と脾摘を同時に施行した一期群(n=12)において,術後3日目以降3週目まで術前値に比し有意の(p<0.05~0.01)低値が持続した.脾摘を先行施行した二期群(n=8)では,脾摘前に1.7±0.3(mean±SE)mg/dlであったピリルビン値が肝切除直前までに0.8±0.1mg/dlまで有意に(p<0.05)低下し,肝切除後も脾摘前値を下回った.また,脾摘後の血清アルブミン値,プロトロソビン活性値の上昇も有意(p<0.05)であり,その結果7症例において臨床病期の1 stage以上の改善が認められた.
以上より,脾機能元進症が顕著な症例に対してはたとえ高ビリルビン血症を認めても肝由来蛋白合成能が比較的良好に保持されていれば,ビリルビン値の高低をもって肝切除の適応を即断せず,脾摘を付加することの利点を念頭に置いたflexibleな対応を考慮すべきと考えられる.

キーワード
脾機能亢進症, 肝硬変症, 肝細胞癌, 脾臓摘出術, 肝切除手術適応


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