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日外会誌. 90(7): 1019-1025, 1989


原著

部分肝阻血傷害及びその修復過程に対する Glucagon-Insulin (G-1) 投与の効果

千葉大学 医学部第1外科

栗原 正利 , 宮崎 勝 , 志村 賢範 , 高橋 修 , 幸田 滋 , 宇田川 郁夫 , 奥井 勝二

(1988年7月22日受付)

I.内容要旨
部分肝阻血時の肝傷害機構を明らかにするとともに肝阻血傷害後の機能回復及び組織修復に及ぼすG-1投与の効果についてもあわせて検討した.ラットを用い肝臓のright lobe及びcaudate lobe(肝の32%領域に相当)の門脈及び動脈を60分間阻血し部分肝阻血モデルを作製した.(実験1)G-1及び生理食塩水を阻血前後40分間に亘り経門脈性に投与した.肝組織血流量において両群間に有意差を認めなかった.肝蛋白合成能は阻血葉で阻血開始とともに生食群,G-1群とも前値の16%,26%と著明に低下した.しかし阻血解除後の肝蛋白合成能の回復はG-1群では速やかで60分,120分後で各々生食群に比し有意に高値を示した(p<0.05).(実験2)60分間の部分肝阻血解除後より経門脈性にG-1及び生食を72時間に亘り持続投与した.肝DNA合成能は阻血解除後36時間目より充進しはじめ48時間目にピークを呈した.この元進は生食群に比しG-1群で著明であり36,48,72時間目において各々有意な高値を示した(p<0.05~p<0.001).また組織学的検討によるMitotic Indexにおいても阻血後48時間目において生食群に比しG-1群に有意の高値を示していた(p<0.001).以上よりG-1投与により部分肝阻血傷害時に低下する肝蛋白合成能の回復及び傷害後の肝DNA合成能,細胞分裂の促進作用が認められ阻血肝傷害時の肝細胞機能回復に有用な治療法となりうることが示された.

キーワード
部分肝阻血, Glucagon-Insulin 療法, 肝蛋白合成能, 肝 DNA 合成能


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