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日外会誌. 90(7): 1026-1031, 1989


原著

成人の先天性胆道拡張症手術例41例における慢性膵炎合併例の検討

名古屋大学 医学部第1外科

久保田 仁 , 二村 雄次 , 早川 直和 , 神谷 順一 , 近藤 哲 , 塩野谷 恵彦

(1988年6月29日受付)

I.内容要旨
成人の先天性胆道拡張症手術例について,胆管切除を伴わない胆管消化管吻合術が膵に及ぼす影響を検討することを目的として,教室で経験した41例の先天性胆道拡張症手術例を対象として,慢性膵炎との合併について検討した.このうち膵・胆管合流様式を確認しえた36例では全例,合流異常症をともなっていた.
既往手術として胆管切除を伴わない胆管消化管吻合術を受けていた症例は8例,初回手術例は33例であった.慢性膵炎の診断は,日本消化器病学会慢性膵炎検討小委員会による診断基準によった.先天性胆道拡張症41例中4例(10%)に慢性膵炎の合併を認めた.初回手術例に限ると33例中1例(3%)のみに慢性膵炎を認めたのに対し,吻合術既往例では8例中3例(38%)と非常に高率に慢性膵炎の合併を認めた.吻合術既往例において吻合術より最終手術までの期間が6年より13年までの5例では慢性膵炎の合併は認められなかったが,17年から22年までの3例いずれにも慢性膵炎の合併が認められた.先天性胆道拡張症において胆管切除を伴わない胆管消化管吻合術は慢性膵炎の誘因となることが示唆された.

キーワード
先天性胆道拡張症, 膵・胆管合流異常症, 慢性膵炎, 胆管消化管吻合術


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