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日外会誌. 90(3): 377-384, 1989


原著

選択的近位迷走神経切離術のラット胃粘膜血流に対する影響

横浜市立大学 医学部第2外科(指導:土屋周二教授)

衛藤 俊二

(1988年5月18日受付)

I.内容要旨
本研究は選択的近位迷走神経切離術(SPV)後に,防禦因子,胃酸分泌と関係深い胃粘膜血流の変化を知るために行った.実験ではラットにSPVを行い,術後12週まで水素ガスクリアランス法により胃粘膜血流を測定し,また同時に胃酸分泌を測定し次の結果を得た.①非刺激時の胃体部粘膜血流量は106.3±9.8ml/min/100gで,SPV後減少し1週後には47.9±7.9ml/min/100g(p<0.01)となり,術後12週でもなお低値を持続し74.5±15.5ml/min/100g(p<0.01)であった.SPV前の前庭部粘膜血流量は102.9±14.0ml/min/100gで,SPV後1週には47.9±7.9ml/min/100g(p<0.01)に減少したが,12週では術前値と変わらなかった.②テトラガストリン,塩酸ベタゾール,2-deoxy-d-glucose(2DG)による刺激酸分泌はSPV後減少した.③胃体部粘膜血流量はSPV前には,テトラガストリン,塩酸ベタゾール,2DGにより増加したが,SPV後では刺激酸分泌の減少と平行して血流増加の程度が減少した.④SPVにより前庭部粘膜血流量のテトラガストリン,塩酸ベタゾールによる増加の程度が減少したが,2DGによる刺激ではSPV前と変わらなかった.
以上から,SPV後には非刺激時の胃体部粘膜血流量が長期にわたり減少すると共に,刺激時の血流の増加も抑制され,この現象が胃酸分泌抑制と平行することが明らかにされた.

キーワード
選択的近位迷走神経切離術, 胃粘膜血流量, 胃酸分泌, 水素ガスクリアランス法


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