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日外会誌. 90(1): 120-126, 1989


原著

腎移植228回 (223症例) の臨床的検討

東京大学医科学研究所 人工臓器移植科
*) 虎の門病院 

杉本 久之 , 秋山 暢夫 , 大坪 修*) , 冨川 伸二 , 三田 勲司 , 別宮 好文 , 今井 利一

(1988年2月25日受付)

I.内容要旨
当科で行われた228回の腎移植を対象とし免疫抑制法,組織適合性の違いにより7群に分類して生存率,生着率,急性拒絶反応,感染症について比較検討し,全体の合併症についても検討を加えた.
Id Sib群(HLA identical),DST・ALG群(donor-specific blood transfusion,anti-lymphocyte globulin使用生体腎移植),CYA群(ciclosporin使用生体腎移植),CYA・Cad群(ciclosporin使用屍体腎移植)の生存率,生着率が良好であり,これらの成績に最も影響を与えているのは免疫抑制法,組織適合性と関連のある急性拒絶反応と感染症であった.これらの群では急性拒絶反応の発生頻度,重症度が低く,また感染頻度はConv・Cad群(conventional cadaver)に有意に高く,致死的な感染症の頻度はALG,Non-DST,Non-ALG群,Conv・Cad群で高かった.
他の合併症として肝障害,大腿骨頭壊死,消化管潰瘍・出血,糖尿病が多く見られ免疫抑制剤の関連したものと考えられたが,感染症に比べるとその発生頻度,致死率は低く,生存率,生着率に対する影響は比較的少かった.
現在までのところCYA群の生着率はDST・ALG群とほぼ同じであり,生体腎移植に関してはCYA使用による成績の向上は見られていない.しかし,CYA・Cad群の生着率はConv・Cad群に比べて驚異的に改善されており,今後のわが国の腎移植の進べき方向を示唆していると考える.

キーワード
腎移植, ciclosporin, donor-speciffc blood transfusion, 急性拒絶反応, 感染症


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