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日外会誌. 90(1): 127-129, 1989


症例報告

妊娠合併乳癌例の検討
ーとくに細胞性免疫能からみてー

熊本大学 医学部第1外科

合志 秀一 , 江上 哲弘 , 磯貝 雅裕 , 宮内 好正

(1988年1月28日受付)

I.内容要旨
2例の妊娠合併乳癌を経験し検討した.
症例1は妊娠初期の36歳女性で腋窩腫痛を主訴として来院し,精査の結果Stage IIIbの乳癌と診断した.妊娠中絶後拡大乳房切断術と放射線治療を行ったが,術後9ヵ月で脳転移・肝転移のため死亡した.
症例2は妊娠中期の30歳女性で,巨大な乳房腫瘤を主訴として来院した.精査の結果,Stage IIIaの乳癌と診断し,化学療法の必要性から人工妊娠中絶を行った.拡大乳房切断術を施行した後,cyclophosphamide, adriamycin,5-FUによる化学療法を行い,現在生存中である.
いずれの症例も妊娠を契機として腫瘍が急激に増大したため,症例2において詳細に入院時の免疫学的検索を行ったところ,T細胞機能とNK細胞活性の著明な低下がみられた.このことから妊娠時の細胞性免疫能の低下が腫瘍の発育を促進することが示唆された.

キーワード
妊娠, 乳癌, 細胞性免疫能


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