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日外会誌. 89(12): 1990-1996, 1988


原著

急性膵炎犬の腎循環動態について
-特に Dopamine,pancreatic protease inhibitor の影響を中心に-

大阪市立大学 医学部第1外科

西脇 英樹 , 康 市塤 , 金沢 学秀 , 日裏 彰人 , 佐竹 克介 , 梅山 馨

(昭和62年12月9日受付)

I.内容要旨
急性膵炎時の腎循環を検討するため,雑種成犬を用い,トリプシン加自家胆汁膵管内注入により急性膵炎犬を作成し,血圧,腎血流量,腎血管抵抗,腎組織血流量を測定する一方,pancreatic proteaseinhibitor(PATM)およびdopamineの腎循環への影響について検討した.急性膵炎犬では全腎血流量は膵炎作成直後から低下し,腎組織血流量でも同様に低下したが,腎血管抵抗では作成2時間後から上昇を示した.膵炎作成早期よりの腎微小循環障害が示唆された.
Pancreatic protease inhibitor(PATM)投与膵炎犬では,血圧,脈圧は比較的維持され,全腎血流量では膵炎作成1時間後まで保持され,その後の低下も,PATM非投与膵炎犬より軽度であつた.腎血管抵抗では作成直後に一過性に低下後上昇するが,その程度はPATM非投与膵炎犬より軽度であつた.腎組織血流量は,膵炎作成1時間後まで維持されたがその後低下傾向を示した.
以上,PATM投与は全腎血流量,腎組織血流量をある程度維持し,腎循環の改善に有用と考えられた.一方,dopamine投与犬では,血圧は膵炎作成90分まで維持されたが,その後低下し,全腎血流量では1時間まで保持されたが2時間以後から有意に低下を示し,腎血管抵抗では漸次上昇するがdopamine非投与膵炎犬に比べさらに上昇傾向がみられ,dopamine投与では膵炎作成早期には腎循環の改差がみられたが,4,5時間後では明らかに低下を示した.

キーワード
急性膵炎, 腎血流量, Pancreatic protease inhibitor, dopamine


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