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日外会誌. 89(8): 1302-1305, 1988


症例報告

拡大肝右葉切除・尾状葉切除,膵頭十二指腸切除を施行した77歳胆嚢癌の1例

*) 名古屋大学 医学部第1外科
**) 山下病院 

近藤 哲*) , 二村 雄次*) , 早川 直和*) , 神谷 順一*) , 高 勝義*) , 清水 信明**) , 住田 啓**)

(昭和62年8月12日受付)

I.内容要旨
症例は77歳の女性で閉塞性黄疸のため来院した.USおよびCTでは肝門部に径2.5cmの充実性腫瘤を認めたが,肝転移はなく肝床浸潤も軽微であつた.経皮経肝胆道鏡下選択的造影も含めた胆道造影では上部胆管,左右肝管をはじめ右後下腹側枝,右尾状葉枝へも浸潤が及んでいた.しかし血管造影では胆嚢動脈以外には明らかな浸潤所見を認めなかつた.また,低緊張性十二指腸造影では粘膜表面にまで及ぶ浸潤が認められた.以上の所見から肝右葉のグリソンは温存できないと考え,拡大肝右葉切除・尾状葉全切除,膵頭十二指腸切除を予定した.一方宿主側の条件としては,亀背,難聴,糖尿病,高血圧症を伴う77歳の高齢者であつたが,肝機能は良好であり“生きる気力”に満ちあふれていることが特筆すべき点であつた.そこで予定の手術を行つたところ術後経過は極めて良好であつた.術後8ヵ月目に腹壁再発を切除した後は,初回手術後2年3ヵ月後の現在再再発なく健在である.切除標本の組織学的検索では本術式の妥当性が示された.
胆嚢癌では術前の正確な進展様式・進展度診断のもとに必要十分と考えられる術式を選択すべきであること,高齢者といえども肝機能,“生きる気力”などの諸条件が整えば拡大手術の適応があることを強調したい.

キーワード
胆嚢癌拡大手術, 高齢者手術, 胆嚢十二指腸瘻


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