[書誌情報] [全文PDF] (3355KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 89(8): 1223-1232, 1988


原著

閉塞性黄疸時の内因性エンドトキシン血症の発現機序に関する研究
―とくに胆道感染の関与について―

熊本大学 医学部第1外科学教室 (指導:宮内好正教授)

山口 卓雄

(昭和62年9月22日受付)

I.内容要旨
閉塞性黄疸時の内因性エンドトキシン(以下,Et)血症の発現に胆道感染がどのような役割をもつかを,閉塞性黄疸104例の臨床成績,閉塞性黄疸20例の門脈血,末梢血リムルステスト(以下,LT)及び家兎38羽を用いた実験から検討した.閉塞性黄疸症例に胆道感染が加わると,黄疸軽減効果は有意に不良となり,その手術成績も胆道感染陰性例に比し有意の差で悪かつた.閉塞性黄疸患者の門脈血 Et 陽性率は65%(20例中13例)であり,そのうち10例79.6%が末梢血も陽性であつた.このうち測定時感染巣のない内因性 Et 血症を呈していたものが7例に認められた.これらの手術予後は不良であつた.実験的にも閉塞性黄疸群の門脈血 Et 陽性率は非黄疸群に比し有意に高く,細網内皮系をブロックすると,末梢血のEt 陽性率は高くなる傾向が認められた.また胆管炎を作製した群では門脈血Et 陽性のものは全例が末梢血も陽性となり,胆道感染が閉塞性黄疸時の細網内皮系機能をさらに低下させていることが示唆された.以上より内因性 Et 血症は閉塞性黄疸時の種々の合併症の発生や手術成績不良に関与していると考えられた.

キーワード
閉塞性黄疸, 内因性エンドトキシン血症, 胆道感染, 細網内皮系機能


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。