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日外会誌. 89(8): 1211-1222, 1988


原著

閉塞性黄疸解除時の血漿交換併用療法に関する実験的検討

神戸大学 医学部第1外科 (主任教授:斉藤洋一)

木全 博己 , 大柳 治正 , 宇佐美 真 , 斉藤 洋一

(昭和62年9月30日受付)

I.内容要旨
閉塞性黄疸の減黄施行時における,血漿交換療法併用の有用性を動物実験で検討した.
総胆管を結紮切離した黄疸犬を作成し,内瘻化と同時に新鮮凍結血漿を置換液とする血漿交換を行い,内瘻単独群を対照にして経時的に減黄効果を比較検討した.
総ビリルビン値は血漿交換により著明に低下し,その後の低下も良く,内瘻群の漸減との間に差を認めた.
また血漿交換前後のビリルビン消失率も血漿交換後に高値をとつた.これは血漿交換によつて体内に貯留していたビリルビンの絶対量が減少した事と,肝細胞のビリルビン処理能の亢進とが組み合わさつて,血漿交換後のビリルビン処理能が産生量や組織からの移行量を上回る為に,血中濃度がさらに低下したと考えられる.黄疸に伴い上昇していた血中ミトコンドリアGOTやGOTの低下も,血漿交換により肝細胞障害が軽減され肝機能が改善されることを裏付けていた.
つぎに,黄疸ラットに内瘻術と血漿交換を併用し,その2日後に35%肝部分切除を施行して,経時的に肝細胞ミトコンドリアの呼吸能と酸化的リン酸化能を調べ,血漿交換併用による肝細胞の予備能に及ぼす効果を検討した.ADP/O比およびRespiratory Control Ratioは血漿交換併用群で有意に改善し,術前の1回の血漿交換が閉塞性黄疸により低下したミトコンドリア機能を上昇させ,肝切除後の回復も促進させることを示していた.すなわち血漿交換の併用は術前の肝予備能の改善につながることが明らかになつた.
その有効性の機序としては新鮮凍結血漿の投与が肝細胞機能の改善につながることも推測されるが,物理的なビリルビンおよび他の肝毒性物質の除去自体が肝細胞への負荷を軽減する効果が大きいと思われる.

キーワード
血漿交換, 閉塞性黄疸, 減黄術, 肝ミトコンドリア機能, 新鮮凍結血漿


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