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日外会誌. 89(7): 1075-1082, 1988


原著

ヌードマウス皮下移植で自然肺転移を生じるヒト肺腺癌培養細胞 KUM・LK-2の樹立とその生物学的特性の検討

近畿大学 医学部第1外科学教室(主任:安富正幸教授)

犬房 春彦

(昭和62年8月5日受付)

I.内容要旨
ヌードマウス可移植性腫瘍で恒常的に自然転移を生じるヒト癌の報告は極めて少ないが,著者は原発性肺腺癌を材料とし,恒常的に自然肺転移のみを生じる新しいヒト肺癌培養細胞を樹立しその生物学的特性と転移機序について検討した.57歳,男性の左上葉原発性肺癌を材料として移植継代系KUM・LK-2Nを樹立し,その2代目移植腫瘍より培養細胞系KUM•LK-2を樹立した.KUM・LK-2Nは初代より5代目まで全継代に自然肺転移を認めた.KUM・LK-2Nはヌードマウス皮下移植で恒常的に肺転移を生じたが筋肉内移植および静脈注入では転移が認められなかった.KUM・LK-2Nはin vitroでCEA,CA19-9の産生が認められたが移植ヌードマウスの血清中では認められなかった.本研究によりヌードマウス皮下移植では恒常的に自然肺転移を生じるヒト癌のモデルを樹立した.ヒト癌のヌードマウス移植での転移は血流や血管新生のみで規定されないことが示唆された.また腫瘍産生物質の増幅器としてのヌードマウス利用の有用性は腫瘍株により差があることを明らかにした.

キーワード
ヒト肺腺癌, ヌードマウス可移植性腫瘍, 自然肺転移


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