[書誌情報] [全文PDF] (2292KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 89(4): 576-581, 1988


原著

核 DNA量 による乳癌の悪性度診断に関する研究

大阪医科大学 一般・消化器外科

西 律 , 岡島 邦雄 , 田口 忠宏 , 水谷 均 , 曽我部 俊大 , 浦上 育典 , 関本 嚴

(昭和62年5月12日受付)

I.内容要旨
乳癌において核DNA量測定が悪性度診断に関して如何なる臨床的意義を有しているかを明らかにする目的で,蛍光顕微測光法により測定した82例の原発巣の核DNA量と,乳癌の予後に影響を与える諸因子のうち,特に組織学的リンパ節転移との関連につき検討を加えた.核DNA量ヒストグラムパターンは, 2c(diploid) に明瞭なピークがあり正常細胞のパターンに近似したD型(diploidtype)とそれ以外のN型(non-diploidtype) に2分類した.
リンパ節転移率はD型28.6%,N型57.4%とN型が有意に(p<0.05)高率で, T因子,組織型を揃えてもN型が高率であった. 5年累積生存率はD型91.7%,N型68.2%とD型が有意に(p<0.05)高く,組織学的リンパ節転移の有無別にみてもD型の生存率が高率であった.核DNA量とリンパ節転移情況の関係からみて, D型の方が縮小手術のより安全な適応となる症例が多いと考えられた.
今回の検討により核DNA量を測定することで乳癌の悪性度診断ならびに悪性度に基づいた手術術式の選択に関して有力な情報が得られる可能性が示唆された.

キーワード
乳癌, 核DNA量, 悪性度


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。