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日外会誌. 89(4): 582-594, 1988


原著

甲状腺癌の超音波診断に関する研究

信州大学 医学部第2外科学教室

横沢 保

(昭和62年5月6日受付)

I.内容要旨
1983年1月から1985年12月までの3年間に当科で手術を施行した甲状腺腫瘍414例(癌172例,良性腫瘍242例)に対し, 7.5MHzの電子リニア走査法による超音波検査をおこない,以下の結論を得た.
摘出標本の割面所見と対比して甲状腺癌の超音波診断基準を作製した.診断基準は,大基準と小基準からなり,それぞれ内部構造と辺縁構造に分けられる.大基準は癌に高頻度にみられ,小基準は良性腫瘍にみられるが,癌でも時に観察された.大基準のなかでも,低エコー,微細もしくは粗大なエコー輝点の混在,辺縁不整,前頸筋癒着,縦横比1.0以上の各項目は癌における陽性率が高く,良性病変における陽性率が低く,診断的意義がとくに高かつた.
この診断基準を用いた超音波検査により,乳頭癌は濾胞癌より,また充実性癌は嚢胞性癌より高い診断率が得られた.微小癌は36例中20例に,腺内転移巣は87例中22例に診断が可能であったが,本超音波検査法の診断の限界は5mmと考えられた.また超音波検査導入前後における甲状腺癌の総合診断率を比較すると,導入後にsensitivityの改善がみられた.また超音波検査導入後において,総合診断率と超音波単独の診断率を比較しても明らかな差は認めなかつた.

キーワード
甲状腺癌, 7.5MHzの電子リニア走査法, 超音波診断基準, 微小癌, 微小腺内転移巣


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