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日外会誌. 89(4): 522-533, 1988


原著

胃癌細胞核 DNA パターンに関する研究
―とくに臨床病理組織学的所見との関連について―

大阪市立大学 医学部第1外科教室(主任:梅山 馨教授)

芳野 裕明

(昭和62年5月14日受付)

I.内容要旨
胃癌内視鏡検査時にえられた生検新鮮標本33例と摘出パラフィン包埋ブロック標本109例および胃癌所属リンパ節転移病巣22個を研究対象として落射型顕微蛍光装置を用いて胃癌細胞核DNAパターンを検討した.胃癌の癌細胞核DNAパターンを正常胃粘膜細胞を対照にIa型(多倍体を伴わないdiploid pattern) 37例, Ib型(多倍体を伴うdiploidpattern) 28例, II型(aneuploidpattern) 60例,III型(mosaicpattern) 17例に分類しえた.同一症例の胃癌生検新鮮標本とパラフィン包埋ブロック標本からえられたDNAパターンはほぽ同じ型を示した.癌巣表層部癌細胞は深層先進部癌細胞のDNAパターンと約90%は一致し,不一致例は深層部に多倍体を認める症例であった.リンパ節転移癌細胞のDNAパターンは原発巣のそれと一致した.胃癌細胞核DNAパターンは組織型並びに肉眼的分類との間にはともに相関はみられなかったが,壁深達度とDNAパターンとの間には有意の相関がみられた.また脈管侵襲陽性,リンバ節転移阻性および高度病期進行例のDNAパターンはIa型が有意に減少し,II,III型が増加傾向を示した.腹膜播種および肝転移陽性例ではIa型は全く認められず,腹膜播種例ではIb型が,肝転移例はIII型が多かった.遠隔成績は, Ia型が最も予後良好であった.
以上の成績から胃癌細胞核DNAパターンは癌組織の生物学的活性をある程度反映するものと考えられ,また術前の内視鏡的生検標本での検索も臨床的に意義あるものと考えられた.

キーワード
胃癌, 顕微蛍光測定, 核 DNA パターン, 生物学的活性, 内視鏡時生検標本


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