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日外会誌. 89(4): 516-521, 1988


原著

食道静脈瘤硬化療法後の胸部 CT の変化
―合併症と手技上の問題点について―

大阪大学 医学部第2外科

塩崎 均 , 矢野 外喜治 , 今本 治彦 , 窪田 剛 , 山田 毅 , 小林 研二 , 森 武貞

(昭和62年4月28日受付)

I.内容要旨
1985~86年の間に食道静脈瘤に対し,内視鏡下に5%エタノールアミン・オレイト血管内注入による硬化療法を17例(延べ24回)に施行し,硬化療法前後のCT像にて縦隔・肺に生じる変化を検討した.
1) 縦隔(食道)の変化
硬化療法前の食道は内腔が分葉状を呈し,直径が平均27mmであったが,硬化療法翌日には直径49mmと著明に肥厚していた.また食道壁の変化は,①均等な壁肥厚8回(33%),②限局した壁内low density 4回(17%),③壁外low density 12回(50%)の3種類に分類できた.食道壁外にlow densityが認められた症例に胸痛•発熱が強く,術後潰瘍形成が多かった.
2) 肺の変化
胸部の変化として,①胸水貯留20回(84%),②無気肺10回(42%),③肺血管陰影の増強16回(66%),④小結節性陰影・スリガラス状変化5回(21%)が認められたが,無気肺・肺血管陰影増強などの症例では硬化剤の肺への流入が示唆された.動脈血ガスPaO2の低下は肺血管陰影増強例で最も顕著であった.
3) 胸部CT像と胸部X線像の比較
食道・縦隔の変化はCT像で24例(100%)にみられたが,胸部レ線像では2例(8%)に縦隔の拡大を認めたのみであった.また,肺の所見はCT像では92%に変化を認めたが,胸部X線像では50%にすぎず,肺実質の変化はX線像では無気肺16%,肺血管陰影増強8%と前述のCT像の診断能に比較し著しく低値であった.
以上のことから, CT像は胸部X線像では診断できない所見が得られ,硬化療法後の合併症の早期発見・予防に有用な診断法である.

キーワード
食道静脈瘤, 内視鏡的硬化療法, エタノールアミン・オレイト, 硬化療法前後の胸部 CT 像, 硬化療法後の合併症


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