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日外会誌. 89(3): 431-436, 1988


原著

頭蓋外の内頸動脈に対する内膜切除術の臨床的検討
―その手術成績と術後経過―

*) 名古屋大学 医学部第1外科
**) 愛知県立尾張病院 血管外科

桜井 恒久*) , 山田 育男*) , 池澤 輝男*) , 塩野谷 恵彦*) , 仲田 幸文**)

(昭和62年4月22日受付)

I.内容要旨
総頸動脈および頭蓋外の内頸動脈(以下,頭蓋外頸動脈)の内膜切除術を受けた24例の手術および術後経過を検討した.術後のfollow up期間は平均2年6カ月±1年8カ月であった.術前の臨床症状では無症状のものが4例, TIAおよびRINDを含む,いわゆる可逆性脳虚血発作の既往があるものが14例,そして完成型脳梗塞のもの(completed stroke群)が6例であった.また, 14例の可逆性脳虚血発作のうち内頸動脈系の病変の局在および病変側がはつきりしていたもの(hemispheric attack群)は7例,その頭蓋内病変の局在および病変側がはつきりしなかったもの(nonhemispheric attack群)は7例であった.完成型脳梗塞は手術時に1例,術後経過観察中に3例に発症した(16.7%).内膜切除術後の再狭窄は2例に認められた(8.3%). これを含め,術後症状の再発または悪化は10例に認められた(41.7%).全症例の検討では無症状率は術後1年で61%まで低下したが,fallow up終了時には54%であった.また,上記3群の術後経過を各々検討するとhemispheric attack群, completed stroke群の順に良く, nonhemispheric attack群が最も悪かった(Kaplan-Meier法).しかし,その間に統計学的有意差は認めなかった.また, 3群とも術後再発は1年以内に多かった.すなわち,頭蓋外頸動脈に閉塞性病変を有するnonhemispheric TIAの症例に対する適切な手術適応と術後1年間の積極的な抗血栓療法が今後の本術式の成績向上につながると思われた.

キーワード
内頸動脈, 内膜切除術, 手術成績


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