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日外会誌. 89(3): 398-407, 1988


原著

最近経験したインスリノーマの10例―術前局在診断と術中における血糖と血中インスリンのモニタリングに関する検討

*) 東京女子医科大学 内分泌疾患総合医療センター内分泌外科
**) 東京女子医科大学 放射線科
***) 自治医科大学 外科
****) 筑波大学 臨床医学系外科

児玉 孝也*) , 伊藤 悠基夫*) , 小原 孝男*) , 藤本 吉秀*) , 磯部 義憲**) , 金澤 暁太郎***) , 相吉 悠治****)

(昭和62年4月10日受付)

I.内容要旨
最近10年間に経験した10例のインスリノーマについて報告する.いずれの症例も意識障害を中心に強い低血糖症状が存在したが,なおてんかん等と誤診されている場合が多かつた.しかし,本症の診断はその疑いさえ持てば,血清IRI(immunoreactive insulin)/血糖比からどの症例でも容易であつた.部位診断として動脈造影は8例に施行され6例で有効,CTは6例中4例,門脈血サンプリングは2例中2例で有効であつた.開腹してみると,インスリノーマは全例触知可能で,6例では摘出術,4例では膵尾側切除術が施行された.インスリノーマは全て単発の腺腫で,最小のものは径1.0cm,最大のものは長径4.5cmであつた.
門脈血サンプリソグと術中に血糖と血清IRIのモニタリングを施行した3例については,症例を呈示した.門脈血サンプリングは動脈造影やCTで部位診断がつかない症例に対しても有効であつた.また,hyperglycemic reboundのみでなく,Quick IRI測定法でインスリノーマ切除後の血清IRIの正常域への低下を術中に確認しておくことは,多発例を見逃さないために有用と思われた.
文献的には,腺腫多発例や開腹してもなお腫瘤を発見できない例が,1割位は存在すると推測される.そうした問題に対処するには,動脈造影やCT,手指による触診といういわば形態に基づく診断のほかに,門脈血サンプリングあるいは術中の血糖と血清IRIのモニタリングという機能的診断法を施行しておくべきであると考える.

キーワード
インスリノーマ, 門脈血サンプリング, 血清IRI, Quick IRI測定法, hyperglycemic rebound


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