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日外会誌. 89(3): 408-415, 1988


原著

抗サイトケラチンモノクローナル抗体による各種腫瘍の組織化学的,生化学的研究
―甲状腺腫瘍を中心として―

日本医科大学 第2外科学教室 (主任:庄司佑教授)

野崎 基

(昭和62年3月24日受付)

I.内容要旨
Intermediate filamentsの一つである上皮細胞由来のcytokeratinに対するモノクローナル抗体PKK-1を用いて,甲状腺およびその他の臓器のフォルマリン固定パラフィン標本ならびにタッチスメア標本に対する免疫組織化学反応をavidin-biotin peroxidase complex法により検索し,更に一部症例には生化学的検討を加えた.
甲状腺疾患では,上皮性である未分化癌とくに小細胞癌と非上皮性腫瘍である悪性リンパ腫は共にPKK-1に反応せず,両者の鑑別は困難であった.しかし,乳頭状増殖を示す乳頭癌では高率に反応陽性となったのに対し,濾胞状増殖を示す濾胞癌,濾胞腺腫では陰性例が大半を占め,両者の鑑別が可能であった. また,タッチスメア標本では陽性例の反応はさらに良好で抗原保持性に優れていると思われ,吸引細胞診に本法を応用し両者の鑑別を行うことが可能と考えられた.
さらに,両者の生化学的相違を検索するため,組織内蛋白濃度測定, sodium-duodecyl-sulfate polyacrylamide gel electrophoresisを行ったところ,乳頭癌症例に分子量40~42kdのpolypeptideが認められ, PKK-1に対する抗原である可能性が示唆された.
甲状腺以外の臓器腫瘍では腺癌に陽性例,胃,大腸の印環細胞癌に判定不能例が多く,肺の扁平上皮癌では陰性例も比較的多い傾向がみられたが概して従来の報告と類似の結果であった.

キーワード
intermediate filaments, cytokeratin, 甲状腺腫瘍, モノクローナル抗体


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