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日外会誌. 88(10): 1485-1493, 1987


原著

111Indium標識血小板を用いたexpanded polytetrafluoroethyleneグラフトへの血小板集積の量的研究

山形大学 医学部外科学第2講座(主任:鷲尾正彦教授)

今井 高二

(昭和61年11月17日受付)

I.内容要旨
家兎の胸部大動脈に内径3mm長さ2cmのexpanded polytetrafluoroethyleneグラフトを移植し,111lndiumで標識した自家血小板を用いて人工血管に集積した血小板数を測定した.移植からの時間経過による血小板数の変化,アスピリンが血小板の集積に与える影響,さらに血栓塊の部分とそれ以外の線維素膜の部分とでの血小板数の差を検討した.
線維素膜の部分への血小板の集積は,アスピリン非投与例では,移植後4時間で8.9±1.1×104/mm2個,(mean±SD,n=2),3日目42.3±16.6×104/mm2個(n=6),9日目17.7±5.3×104/mm2個(n=5),30日目6.8±3.2×104/mm2個(n=5)であり,111Indium標識血小板の注入後48時間で人工血管を採取したもののうちでは3日目,9日目,30日目の順で有意に(p<0.05)血小板の集積は減少していた.アスピリン投与例では,移植後4時間では13.3±9.1×104/mm2個(n=5),3日目20.5±8.4×104/mm2個(n=7),9日目13.4±3.8×104/mm2個(n=7),30日目13.1±4.5×104/mm2個(n=4)であつた.移植後3日目ではアスピリンによつて血小板の集積は有意に(p<0.03)抑制されていたが,血小板の集積が少ない他の移植後の経過時間ではアスピリンによる血小板集積の有意な抑制は認められなかつた.血栓塊の部分にはアスピリン非投与例では3,600±2,400×104/mm2個(n=6),投与例では3,500±520×104/mm2個(n=4)の血小板が集積しており,血栓塊への血小板集積に対するアスピリンの抑制効果は認められなかつた.
人工血管への血小板の集積から検討した場合,アスピリンの投与は移植後早期から必要であり,血小板の集積が減少した時点ではその効果は無く,血栓塊のように血小板の凝集し易い部分ではアスピリンの効果は期待できないものと考えられた.

キーワード
アスピリン, インジウム, 血小板, 血小板凝集能, 人工血管


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