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日外会誌. 88(3): 354-358, 1981


症例報告

腹腔動脈造影時の “spasm” により壊死に陥つた肝細胞癌の1例

門司鉄道病院 外科

岩崎 秀一 , 脇 澄夫 , 丸田 真一 , 藤田 光昭

(昭和61年5月29日受付)

I.内容要旨
腹腔動脈起始部のspasm後,血管像が一変し,生検により,肝細胞癌壊死の診断を得た症例を報告する.症例は54歳男性で,肝右葉後上区域に9.4×8.1cm大の腫瘍が存在した.初回の腹腔動脈造影で,右肝動脈より栄養される血管に豊んだ腫瘍像を認めた.化学療法として, Lipiodol-Adriamycin動注を目的に第2回目の血管造影で,超選択的にカテーテル操作中,腹腔動脈起始部のspasmをひきおこした.ヘパリン加生食によるflushや,カテーテル交換などを行うも腹腔動脈造影されず, spasm出現後約50分後に動注を断念した.翌日より, 38℃から39℃の発熱が11日間持続し,一過性に血清transaminaseの上昇を見た.解熱後の血管造影で,腫瘍像は一変し, hypovascularとなり,経皮的経肝腫瘍生検で,肝細胞癌壊死の診断を得た.心房細動,異型狭心症があつた為,右肝動脈結紮術を施行し,術後腫瘍はさらに縮小した.

キーワード
spasm, 腫瘍壊死, 肝細胞癌


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