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日外会誌. 87(11): 1426-1431, 1986


原著

腸閉塞症での phenol 類の生成,吸収と排泄について

横浜市立大学 医学部第2外科(主任教授:土屋周二)

川本 勝

(昭和61年2月18日受付)

I.内容要旨
腸閉塞では腸管内に正常にはほとんどみられないp-cersolとphenol(以下両者をあわせてphenol類と言う)が生成される.その生成・吸収・排泄の様相を明らかにするためこの研究を行なつた.
まず単純性腸閉塞17症例についてみると腸液中のphenol類は15例にみられ,4.2±9.7μg/ml(m±1sd)の濃度で検出された.そのうちp-cresolは15例(88%)にみられ,3.8±7.7μg/mlの濃度で検出された.phenolは4例(23%)にみられ,0.5±2.6μg/mlの濃度で検出された.腸液中のphenol類はイレウス管挿入直後では高濃度であつたが,閉塞の改善と共に低濃度となつた.
閉塞より口側の腸管内では腸液中に嫌気性菌および好気性菌が増加し,104~10個/mlに達し,これとphenol類濃度は平行して変動した.
また腸閉塞症では,尿中のphenol類の濃度は高く,排泄量は平均294±415mg/日であり,これらは腸液中濃度と平行して変動した.
雑種成犬の両端を閉じた回腸閉塞を作製し,p-cresolとphenol混合溶液を注入すると,注入後5分,15分後に門脈血中に増加し,60分後には末梢静脈中でも上昇した.以上の結果から,腸閉塞症では閉塞上部の腸管内に細菌が増殖し,細菌代謝物であるphenol類が生成され,腸粘膜からすみやかに門脈中へ吸収された後,腎から尿中へ排泄されると考えられた.phenol類は生体に有害であり,これを防ぐためにも腸閉塞の解除が必要と考えられる.

キーワード
腸閉塞症, phenol 類, p-cresol, phenol, 腸内細菌


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