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日外会誌. 87(11): 1422-1425, 1986


原著

大腸癌肝転移の CEA ダブリングタイムからみた発育速度に関する研究

金沢大学がん研究所 外科
*) 昭和大学付属豊洲病院 

高橋 豊 , 草間 悟*) , 磨伊 正義 , 上野 雅資 , 荻野 知己 , 上田 博 , 沢口 潔

(昭和60年12月23日受付)

I.内容要旨
癌の生物学的悪性度を表現する因子の一つとして,発育速度が重要であることを,すでに癌の時間学の立場から報告してきた.そこで今回大腸癌の発育速度を,肝転移症例を対象に血中CEAの推移から算出し,これにもとずき,発育速度を左右する因子について検討した.その結果,大腸癌肝転移症例13例のCEAダブリングタイムは,10日から112日と広い範囲に分布し,平均は57.8±35.4(SD)日であつた.CEAダブリングタイムを左右する因子の検討では,性別,年齢および原発巣の占拠部位と有意な関係を認めなかつたのに対し,組織型ではその分化度と発育速度とが大きく相関し,低分化型腺癌のダブリングタイムが高分化型腺癌のそれより有意に短いという成績を得た.従来低分化型腺癌の症例の多くは生存期間が短いことが指摘されているが,その理由としてこれまで推測されていた高い転移率ばかりでなく,速い発育速度が大きく影響しているものと考えられた.さらに術後生存期間を確認できた肝転移症例8例を用いて,各症例のCEAダブリングタイムと生存期間との相関をみたところ,有意の正の相関関係が認められ,ダブリングタイムが生存期間に大きな影響をおよぼすことが証明された.

キーワード
大腸癌, ダブリングタイム, CEA, 組織型, 生存期間


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