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書誌情報]
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日外会誌. 87(3): 307-314, 1986
原著
腹部外科手術後の凝血学的検討
-特に DIC 発生に関連して-
I.内容要旨腹部外科手術後に発生するDICの成立過程を明らかにするために,手術前後の血液凝固,線溶系の動態を観察した.
まず第I期検索として,胆道手術,胃切除術後の患者126例について,FDP,フィブリノーゲン,血小板数を測定した.術後FDPの軽度上昇,フィブリノーゲンの有意の増加を認めたが,DICの発生は1例もなかつた.つづいて第II期検索として,より手術侵襲の大きな膵頭十二指腸切除術や肝切除術など30例について,HPT,PT,Fbg,血小板数,α2-PI,AT-III,プラスミノーゲンなどを第10病日まで 測定した.その結果,肝硬変非合併肝癌に対する肝切除術や膵頭部領域癌に対する膵頭十二指腸切除術後には,HPT,PT活性の低下,Fbgの増加,FDPの上昇とAT-IIIの低下がみられるものの,いずれも軽度な変化であり,しかも第5~10病日には術前値に戻つていた.臨床的にもこれら13例は全例順調に回復した.一方,肝硬変に合併した肝癌に対する肝切除術や食道静脈瘤に対する経腹的食道離断術では,凝血学的パラメーターの変動は著明であつた.すなわち,HPT,PT活性の有意の低下,FDP の増加,AT-III,プラスミノーゲンの減少などが明らかであり,DIC scoreも日毎に漸増した.臨床的にも17例中7例をDICと多臓器不全にて失つた.肝硬変合併例17例中11例にGabexate Mesilateの持続点滴静注をおこない,DICに対する予防効果を検討したところ,使用群は対照群に比べて,FDPとDIC scoreの点で良好な成績を示した.
キーワード
汎発性血管内血液凝固症候群(DIC), 肝切除術, 肝硬変症, 細網内皮系, 多臓器不全
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