[書誌情報] [全文PDF] (6854KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 87(3): 297-306, 1986


原著

消化器癌病巣への放射標識抗 CEA 抗体の集積

横浜市立大学 医学部第2外科(主任:土屋周二教授)

大橋 昭

(昭和60年6月15日受付)

I.内容要旨
放射標識抗CEA抗体が消化器癌巣にどの様に集積するかを検討し,抗CEA抗体を用いた診断と治療について研究した.
ヒト大腸癌の肝転移巣より抽出したCEAをウマに免疫してえられた抗CEA抗体に125Iを標識して,進行消化器癌患者(胃癌9例,大腸癌17例)に投与し,癌巣部,健常部粘膜等への放射活性度を測定して比較し,以下の結果を得た.
125I標識抗CEA抗体は,健常部粘膜より癌巣部に多く集積し,その平均集積比(癌巣部/健常部粘膜) は,3.28±1.53(n=26)であつた.またその集積比は血中CEA値の高いものほど高かつた(p<0.05).そのほか,癌巣部と血液,肝臓,皮膚,脂肪との125I標識抗CEA抗体の集積比は,それぞれ1.91±1.32,2.90±1.47,5.70±3.28,12.86±8.48で,癌巣部の集積が最も高かつた.
次いで抗CEA抗体に131Iを標識し,画像診断を試み,癌病巣を有する4例中2例に抗CEA抗体の癌巣部への集積が確認できた.
以上の結果から抗CEA抗体は,他臓器より癌巣部に多く集積することが明らかであり,抗CEA抗体を用いた癌の診断と治療の可能性が示唆された.

キーワード
CEA(carcinoembryonic antigen), 消化器癌, 放射標識抗 CEA 抗体, 放射性免疫学的診断


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。