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日外会誌. 87(2): 180-188, 1986


原著

閉塞性黄疸時の急性潰瘍発生機序とその対策
-特に胃壁血流の変動を中心として-

神戸大学 医学部第1外科(主任:斉藤洋一教授)

裏川 公章 , 長畑 洋司 , 福岡 秀治 , 林 民樹 , 高田 孝好 , 松井 祥治 , 斉藤 洋一

(昭和60年4月30日受付)

I.内容要旨
閉塞性黄疸時に発生するストレス潰瘍発生要因としての胃壁血流の減少の原因について,胃粘膜ノルアドレナリン(NA),胃粘膜prostaglandin E2(PGE2)動態の面より検討し,さらにPGE2を経口投与した場合の予防効果についても実験的に検討した.
実験は体重200g前後のWistar系雄性ラットを用い,対照群,閉塞性黄疸1W群,2W群に水浸拘束ストレスを負荷して行ない,以下の成績を得た.
1.水浸拘束負荷後の胃壁血流量は各群とも負荷1時間後に有意な低下を示したが,特に黄疸の長期持続した2W群では1時間後より最低値を示し,その減少率は他の2群より大であつた.
2.胃壁血流の減少に一致して胃粘膜NA量は減少,枯渇し,胃粘膜PGE2量も有意に低値を示した.6ヒドロキシドパーミンを投与し,交感神経機能を低下さすと,胃粘膜PGE2量は明らかに低下した.
3.胃内pHは各群とも負荷1時間後の同程度の過酸を示し,胃酸は潰瘍形成を助長する二次的因子と考えられた.
4.PGE2を投与すると,潰瘍指数は対照群に比較して低値を示し,また胃壁血流量,胃粘膜NAの減少も抑えられた.
以上より,黄疸病態下でのストレス侵襲に対する胃壁血流の急激な低下は胃粘膜NAの減少及び粘膜PGE2の減少が関与していると推測され,PGE2はNAともに胃局所の血流を相互にregulateしている可能性が示唆された.また潰瘍発生に占めるPGE2の役割については,粘膜PGE2の絶対的低下により潰瘍指数が上昇し,また予防投与することで潰瘍発生の抑制を得たことから,PGE2の減少は潰瘍発生の一要因と考えられた.

キーワード
閉塞性黄疸, 胃壁血流, 胃粘膜 NA, 胃粘膜 PGE2, ストレス潰瘍


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