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日外会誌. 87(2): 172-179, 1986


原著

食道静脈瘤に対する内視鏡的硬化療法に伴う肺合併症に関する実験的研究

東京大学 医学部第2外科

梅北 信孝

(昭和60年4月23日受付)

I.内容要旨
食道静脈瘤に対する内視鏡的硬化療法の血管内注入法に用いられる硬化剤 Ethanolamine-Oleate (EO)の肺に対する影響をみるために雑種成犬18頭を次の3群にわけ実験的に検討した.
A群:EO 1ml/kgをone-shotで右房内へ急速に注入した群(n=6)
B群:EO 1ml/kgを4回に分けて右房内に1分以内に分注した群(n=6)
C群:生理食塩水1ml/kgを注入した対照群(n=6)
各群でSwan-Ganzカテーテル,Lung-Waterカテーテルを挿入し,肺血管外水分量,肺循環動態,血液ガス分析,肺内シャント率などの測定を行い次の結果をえた.なお肺血管外水分量は二重指示薬希釈法によつた.
1)EOの1ml/kgの静注により6頭中4頭が血性泡状の痰を排出し早期にショックとなり死亡した.他の2頭も肺血管外水分量の著明な増加と肺内シャント率の上昇,PO2の低下をみた.
2)EO 1ml/kgを4回にわけ投与すると肺血管外水分量と肺小動脈血管抵抗の軽度の上昇が認められたのみであつた.
3)以上よりEOの肺に対する影響は投与総量によらず1回ごとの注入量に依存すると考えられた.
4)内視鏡的硬化療法にあたつては,肺合併症を十分念頭におき,また投与量も必要最小限に抑える必要があるとおもわれる.

キーワード
食道静脈瘤, 内視鏡的硬化療法, 肺合併症, 肺血管外水分量


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