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日外会誌. 86(2): 173-178, 1985


原著

閉塞性黄疸の急性潰瘍におよぼす影響
-特に防御因子の面からみて-

東北大学 第1外科(主任:佐藤寿雄教授)

宮川 英喜 , 亀山 仁一 , 今野 喜郎 , 成井 英夫

(昭和59年4月11日受付)

I.内容要旨
急性潰瘍の発生過程における胃粘膜の攻撃防御因子の経時的変化,閉塞性黄疸の影響および迷切術の効果について,これまでの胃内pH,potential difference(以下,PD)に加えて,新たにHbackdiffusion(以下,HBD),nonparietal secretion(以下,Vnp)を用いて検討した.
体重約260gのラット213匹で対照群,黄疸群,迷切群,黄疸兼迷切群の4群を作成し,術後2週目で10時間の水浸拘束を行ない,胃内pH,PD,HBD,Vnp,潰瘍係数を経時的に測定し,以下の成績を得た.
1)対照群では拘束後胃内pH,PD,Vnpは減少し,UI,HBDは増加した.
2)黄疸群では対照群よりHBDは高値を,Vnpは低値を示す傾向を認めた.
3)迷切群では対照群よりHBDは高値を,Vnpは低値を示す傾向を認めた.
4)黄疸兼迷切群では黄疸群よりHBD,Vnpいずれも高値を示す傾向を認めた.
以上より,水浸拘束では胃酸分泌亢進と胃粘膜の脆弱化により潰瘍が発生するものと思われ,閉塞性黄疸による潰瘍発生の増加は防御因子のより高度な障害によるものと思われた.また,迷切術は攻撃因子を抑制するが,一方では防御因子の障害を助長し,防御因子の低下している状態では,潰瘍の発生を完全には抑制できないものと思われた.

キーワード
急性潰瘍, 閉塞性黄疸, 迷切術, H+ back diffusion, nonparietal secretion


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