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日外会誌. 86(2): 179-186, 1985


原著

胆管癌の進転様式-特に胆管壁の水平浸潤について

*) 福井医科大学 第1外科
**) 横浜市立大学 第2外科
***) 横浜赤十字病院 外科

嶋田 紘*) , 新本 修一*) , 中川原 儀三*) , 小林 衛**) , 土屋 周二**) , 工藤 琢也***) , 森田 修平***)

(昭和59年4月9日受付)

I.内容要旨
切除胆管癌25例の遠隔成績と切除標本の組織学的検索から胆管癌の胆管壁の水平浸潤について検討した.耐術19例の遠隔成績で死亡10例中5例の死因は胆管断端の癌遺残による吻合部再発であつた.吻合部再発5例中4例が肝管癌,上部胆管癌の肝門部胆管癌であつた.胆管癌の胆管浸潤形態は深達度がmのmucosal infiltration 1例とmucosal and transmural infiltration 2例,transmural infiltration 22例に分けられた.癌組織と粘膜下に存在する腺管との鑑別,間質や脈管内に存在する少数の癌細胞の確認,更に癌の浸潤範囲の決定にPAP法によるCEA染色は有用であつた.癌の胆管壁の水平浸潤距離(浸潤距離)は肝側が平均19.1mm,十二指腸側が5.9mmであつた.腫瘍の肉眼的形態別にみた平均浸潤距離は乳頭型15mm,乳頭浸潤型40mm,結節型4mm,結節浸潤型16.3mm,浸潤型37.6mmであつた.組織型別にみた平均浸潤距離は乳頭状腺癌15mm,管状腺癌24.8mm,低分化腺癌7.5mmであつた.経皮的胆管像と平均肝側浸潤距離は逆U字型,凹字型閉塞像が13.8mm,U字型,V字型閉塞像が19.7mm,しめつけ狭窄像が34.3mmであつた.即ち胆管像でU字型,V字型閉塞像やしめつけ狭窄像の症例で肉眼型が結節浸潤型や浸潤型を示す症例は30mmもtransmural infiltrationの形で浸潤することが明らかとなつた.深達度と平均浸潤距離はm 15mm,sm・pm 40mm,a(外膜)17.5mmであつた.リンパ管侵襲度と平均浸潤距離はly0 15mm,ly1~2 21.6mm,ly3 23.2mmであった.以上より胆管癌の胆管壁の水平浸潤は粘膜下より外側に豊富に存在するリンパ管を介して生ずることが示唆された.すなわち胆管癌の切除に際しては,粘膜面は勿論のこと,胆管壁内でも予想以上に広範な水平浸潤を来している症例が多いことを念頭に入れる必要がある.

キーワード
胆管癌, 胆管浸潤, CEA(carcinoembryonic antigen)染色, 胆管レ線像


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