[書誌情報] [全文PDF] (5309KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 86(2): 160-172, 1985


原著

閉塞性黄疸の耐糖能障害におけるインスリン反応に関する臨床的研究

1) 自治医科大学 消化器外科
2) 自治医科大学 消化器内科

笠原 小五郎1) , 安田 是和1) , 普天間 朝夫1) , 山下 裕一1) , 天目 純生1) , 柏井 昭良1) , 金澤 暁太郎1) , 山中 桓夫2) , 井戸 健一2)

(昭和59年4月3日受付)

I.内容要旨
閉塞性黄疸の耐糖能障害におけるインスリン反応に関する臨床的研究
閉塞性黄疸の耐糖能障害について,脂肪肝,慢性肝炎,肝硬変などのび慢性肝疾患,膵疾患,真性糖尿病などと対比しつつ,経口ブドウ糖負荷試験におけるインスリン反応を中心に検討した.
脂肪肝・慢性肝炎,肝硬変では,耐糖能障害に比しインスリン反応が高いことが特徴的であつた.また,慢性肝炎,肝硬変ではΣIRI,ΣIRI/ΣBSおよびinsulinogenic indexは耐糖能が障害されるにつれて低下する傾向がみとめられた.膵管の狭窄・閉塞を伴う閉塞性黄疸(膵頭部腫瘤)では,耐糖能障害に比しインスリン反応は抑制されinsulinogenic indexは0.5以下の低値を示した.しかし,膵管の狭窄・閉塞を伴わない閉塞性黄疸(閉塞性黄疸)では,約半数がinsulinogenic index 0.5以上でインスリン反応も高く,全体に耐糖能が障害されるにつれてインスリン反応もinsulinogenic indexも低下する傾向がみられた.
ΣBS-ΣIRI平面(小坂ら)で,insulinogenic indexが0.5以上の脂肪肝,慢性肝炎,肝硬変は非糖尿病域に分布し,0.5以下のものでは中間域に分布する傾向にあつた.膵管の狭窄・閉塞を伴う閉塞性黄疸は膵疾患(膵体尾部癌,慢性膵炎)と同様,糖尿病域に分布した.膵管の狭窄・閉塞を伴わない閉塞性黄疸ではinsulinogenic indexが0.5以上の約半数で非糖尿病域に分布し,0.5以下の残りの半数で糖尿病域に分布する傾向がみられた.したがつて,閉塞性黄疸の初期では肝機能障害を反映してインスリン反応が亢進し,閉塞性黄疸が進行するにつれて膵ランゲルハンス島が障害されインスリン反応が抑制されると推測された.

キーワード
閉塞性黄疸, 経口ブドウ糖負荷試験, インスリン反応


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。