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日外会誌. 86(1): 23-31, 1985


原著

ラット肝ミトコンドリアの酸化的燐酸化反応に対する E. coli endotoxin の阻害機構

1) 山形大学 医学部外科学第1講座
2) 山形大学 医学部生化学第1講座

石山 秀一1) , 塚本 長1) , 平賀 紘一2)

(昭和59年3月8日受付)

I.内容要旨
ラット肝ミトコンドリアを用いて,酸化的燐酸化反応に対するE. coli endotoxinの阻害機構について検討した.
ミトコンドリアを30℃で,endotoxinと反応させ,呼吸活性を調べるとrespiratory control indexはendotoxinの濃度に依存して低下した.これは,state 3の呼吸抑制によるものであつたので,state3の呼吸に関与する,1)脱水素酵素,2)電子伝達系の酵素,3)adenine nucleotide carrier,に対するendotoxinの阻害効果について詳細に検討した.脱水素酵素,及び電子伝達系の酵素は,endotoxinによつて殆んど阻害されなかつたが,dinitrophenol存在下の呼吸速度はわずかに障害された.しかし,その阻害度は,state 3の呼吸抑制を説明するには十分ではなかつた.
一方,adenine nucleotide carrierの活性を[14C]ADP及び[3H]carboxyatractylosideを用いて測定すると,adenine nucleotide交換反応が,endotoxinにより著しく阻害され,その阻害度はstate3の呼吸抑制と同程度であつた.また,ADPのadenine nucleotide carrierへの特異的結果量も,わずかながら減少した.このようにendotoxinは,ADPとadenine nucleotide carrierとの結合,及び,ADPのmatrix内への移送の両段階を阻害してstate 3の呼吸を抑制するものと考えられたが,これらの阻害効果はCa2+イオンにより増強され,EGTAあるいはdibucaineをあらかじめ加えておくと殆んど失われた.従つて,endotoxinの効果の発現にはphospholipase A2によるミトコンドリア膜,特に脂質二重層の障害が介在している可能性が示唆された.

キーワード
ミトコンドリア, 酸化的燐酸化反応, endotoxin, adenine nucleotide carrier, phospholipase A2


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