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日外会誌. 86(1): 8-22, 1985


原著

制癌剤感受性試験
-DNA 合成(3H-Thymidine uptake)阻害率よりみた臨床例の検討-

京都大学 第2外科

仁尾 義則 , 稲本 俊 , 大垣 和久 , 菅 典道 , 堀 泰祐 , 中山 昇 , 山崎 信保 , 日笠 頼則

(昭和59年3月24日受付)

I.内容要旨
In vitro制癌剤感受性試験として,制癌剤による癌細胞の3H-TdR uptake阻害率より判定する方法を基礎的に確立し,106例の人癌の感受性を検索しえたので報告する.
先づ,人新鮮癌組織を細切し,collagenase処理の後,3段階濃度のFicoll-Paqueを用いたDiscontinuous density gradient法にて浸潤リンパ球等の間質細胞を癌細胞より除いた.この方法により,癌細胞が80%以上占める細胞浮遊液が得られ,また,20%までの非癌細胞の混入は癌細胞の3H-TdR uptakeに影響しなかつた.癌細胞をmicroplateに分注培養し,細胞回収の18時間前に0.5μCiの3H-TdRを加え,semiautomatic cell harvesterにて細胞を回収し,その3H-TdR uptakeは液体scintillation counterにて測定した.基礎的検討より,細胞濃度は5×104/wellが至適であり,培養時間は,無処置癌細胞の3H-TdR uptakeがpeakを示す3日間とした.制癌剤は,2種類の濃度で3日間の持続接触とした.
各制癌剤の3H-TdR uptake阻害状態の経時的検討では,3H-TdR uptake阻害はほぼ3日目で最大となり,以後平衝に達し,また,従来3H-TdR uptakeを上昇させるため判定に適さないとされていた5-FUに関しても,3H-TdR uptakeの上昇は1日目のみであり,2日目より低下し,3日以後平衡に達し,5-FUも本法で充分判定可能と考えられた.
臨床例158例に本法にて感受性を検索し,106例(67%)に効果を判定しえた.発生臓器別の制癌剤感受性の特徴としては,乳癌ではADM,CQ,大腸・直腸癌では5-FU,CQの感受性が高く,また胃癌ではCQを除いて全体的に制癌剤に抵抗性であつた.

キーワード
制癌剤感受性試験, 3H-Thymidine, 乳癌


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