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日外会誌. 85(6): 534-540, 1984


原著

ラット心による心筋保護液の至適K濃度および至適Mg++濃度に関する研究

北海道大学 医学部第2外科学教室

高橋 順一郎 , 松浦 正盛 , 渡辺 不二夫 , 立木 利一 , 技沢 寛 , 川上 敏晃 , 田辺 達三

(昭和58年7月26日受付)

I.内容要旨
開心術中の心筋保護法としてPotassium Cardioplegiaの有効性については,ほぼ認められていると考えられるが,異論も散見されている.Mg++は細胞膜安定,高エネルギーリン酸化合物であるATPとの複合体として作用する有効性,またCa++の結抗剤としての効果など心筋保護にかなり有利であることが推測される.
これら二つのイオンの組合せによつて,心筋保護効果が増すことが期待されるが,その真偽とそれらの至適イオン濃度を決定することを本研究の目的とした.
摘出ラット心を用いModified Krebs-Henseleit bicarbonate buffer solutionでLangendorf perfusionを行い心拍数を測定した.K+およびMg++各々単独,K+-Mg++の組合せにより心停止が得られる濃度を検討したところ,K-aspartate単独では15mM/L,MgCl2では25mM/Lで心停止が得られたが,K-aspartate-MgCl2の組合せではこれより低い濃度で心停止が得られ,その濃度は10mM/L―15mM/Lであつた.
次に摘出ラット心を用い潅流液温37℃,非酸素化液,潅流圧50cmH2O,潅流時間120分,持続潅流という条件で,K+濃度 (5.9,15,25,40,60mEq/L),MgCl2 ( 1.2,13,25,33,50mM/L) の組合せから11組を比較検討した.Isolated working heart apparatusを用い収縮期大動脈圧,心拍出量および冠潅流量を測定し,対照値とした.保存後5,15,30分後の同様の測定を行い回復率で示した.
MgCl2 25mM/Lの濃度で一定にした場合KCIを5.9,15,25,40mM/Lと増量添加するに従い心拍出量の回復率は45±3.0%,36±5.9%,32±3.1%,29±6.6%と低下した.
MgCl213m M/Lの濃度で一定にした場合,KCIを15,25,40mM/Lに増量添加するに従い心拍出量の回復率は46±8.4%,50±8.0%,74±3.7%とだんだん良い回復率を示したが,60mM/Lに増量したところ52±6.0%に低下した.
この実験に使用した基本液はBasic modified Krebs液でありこれを使用するならば至適KCl濃度は40mM/L,至適MgCl2濃度は13mM/Lであった.

キーワード
心筋保護法, Potassium and Magnecium Cardioplegia, 至適K-Mg濃度, Basic modified, Krebs液, Isolated working heart apparatus


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