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日外会誌. 85(5): 433-444, 1984


原著

選択的近位胃迷走神経切離術の胃幽門洞粘膜内ガストリンおよびソマトスタチン濃度におよぼす影響についての実験的研究

新潟大学 医学部外科学教室第1講座(主任:武藤輝一教授)

鰐渕 勉

(昭和58年7月20日受付)

I.内容要旨
選択的近位胃迷走神経切離術(以下選択胃迷走切と略す)が, 胃幽門洞粘膜内ガストリンおよびソマトスタチン濃度におよぼす影響を雑種成犬を用いて経時的に内視鏡生検法で粘膜を採取しその変動を検討した.基礎的検討として,ガストリンとソマトスタチンの同時抽出を試みたが,蒸溜水または酢酸による同時抽出はいずれも一方の回収濃度が低くなり困難と思われた.幽門洞部におけるガストリン濃度は,前壁,小弯後壁,大弯のいずれの部位でみても有意差のある濃度分布はみられず,また幽門輸からの距離との間にも特別な相関関係は認められなかった.幽門輸より3cm以内で全周よりほぼ均等に8カ所生検採取した粘膜より抽出したガストリン濃度は,残存した全ての幽門洞粘臓より抽出したガストリン濃度と近似しており,内視鏡的生検採取法で経時的に繰り返し粘膜を採取し変化を検討することは妥当であると思われた.次に雑種成犬に選近胃迷切を施行し,対照として単開腹術を施行し,いずれの群も手術前に2回,手術後4週,8週,12週に全麻下に内視鏡を用いて幽門洞部の隣接する2点で粘膜を採取し全周よりほぼ均等に8カ所から計16点採取し, 2分し各々ガストリン測定用,ソマトスタチン測定用とし別々に抽出操作を行ったあとそれぞれradioimmunoassayにて測定した.単開腹群は幽門洞粘膜内ガストリンおよびソマトスタチン濃度は,4週,8週,12週をいずれも有意の変化がみられなかった.選近胃迷切群は幽門洞粘膜内ガストリン濃度は,4週より上昇の傾向がみられ,8週および12週で有意の上昇が認められた(p<0.01,p<0.01).幽門洞粘膜内ソマトスタチン濃度は,有意の変動はみられなかったが,12週で著しい上昇がみられるものがあった.
選近胃迷切は幽門洞粘膜内ガストリン産生に強い影響をおよぼし,やや遅れてソマトスタチン産生にも影響をおよぼすものと思われた.

キーワード
選択的近位胃迷走神経切離術, 幽門洞粘膜内ガストリン, 幽門洞粘膜内ソマトスタチン


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