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日外会誌. 85(5): 445-451, 1984


原著

肝不全ラットに対する長時間交叉灌流の意義について

東北大学 医学部第1外科

岡部 健二 , 小山 研二 , 大内 清昭 , 浅沼 義博 , 佐藤 寿雄

(昭和58年7月14日受付)

I.内容要旨
急性肝不全治療における肝補助療法の意義を解明するために,肝不全ラットを用いて効果的で最も基本的な肝補助である正常ラットとの交叉灌流を行ない,その治療効果を肝ミトコンドリア(Mt)機能を中心に検討した.
実験にはSprague-Dawley系ラットを使用し,D-Galactosamine(GalN) 1.2g/kgを1回腹腔内投与し肝障害を作成して投与後24時間から無麻酔下に1ml/minの血流量で交叉灌流を8時間施行した.同時に肝不全ラットに偽灌流を行ないこれを対照群とした.
その結果,生存率はGalN投与48時間後に交叉灌流群では86%,末治療の偽灌流群では66%,60時間後にはそれぞれ57%,23%と交叉灌流により向上する傾向がみられた.GalN投与により肝Mt機能は障害されCyt a (+a3)のTurnover number of phosphorylationは低下し,Cyt a (+a3)は減少する.これに対して8時間の交叉灌流を行なうと,Mt機能はやや改善され,体重あたりのMtエネルギー供給量も増加した.また,Cyt a (+a3)とTurnover numberの低下も軽度にとどまった.肝の組織学的検索からは,生存ラットは交叉灌流の有無にかかわらず肝再生が認められ,またGalN投与48時間後においては交叉灌流により肝実質細胞残存率の低下が改善された.
以上の成績から,肝不全ラットにGalN投与24時間後より8時間の交叉灌流を行なうとCyt a (+a3)の減少とTurnover numberの減少が軽度にとどまり,Mtエネルギー供給量も増加して,生存率も向上するものと考えられた.

キーワード
急性肝不全, 交叉灌流, 肝ミトコンドリア機能, ガラクトサミン肝壊死ラット


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