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日外会誌. 85(5): 421-432, 1984


原著

ホルモン非依存性乳癌に対する化学・放射線療法の効果に関する実験的研究
-細胞動態を中心に-

慶応義塾大学 医学部外科学教室(指導:阿部令彦教授)

露木 建

(昭和58年7月1日受付)

I.内容要旨
ヌードマウス可移植性ヒト乳癌株(MX-1)を用いて実験的化学・放射線療法をおこないその併用効果を細胞動態から解析し検討した.
化学療法としてmitomycin C (MMC) 0. 5, 1, 2mg/kgを1回腹腔内投与し,放射線療法としてLinacにより 500,1,000,2,000rads/mouseを1回局所照射した.併用療法は MMC 1mg/kg,照射500rads/mouseを24時間の間隔をおき, MMC先行及び照射先行の2群を設定した.効果判定はBattelle Columbus Laboratories Protocolに従い,細胞動態の解析はFlow cytometry (F.C.M.), 3H-thymidine uptake labeling index (L.I.), mitotic index (M.I.) および3H-thymidine uptakeによるpercent labeled mitosis curve (PLM)により検討した.
MMC療法と放射線療法はいずれもTRW/CRWの実験期間中の最低値に対して用量依存性を示し,MMC 1mg/kgの効果は照射500rads/mouseの効果とほぼ同等であり,かつ臨界有効量と考えられた.TRW/CRW最低値の対数と治療用量,L.I.の間には有意の相関 (相関係数 r=−0.986,−0.998)が認められた.PLMによる解析では MX-1の細胞回転周期は36時間であり,growth fraction 95.8% ,continuous labelingによるL.I.は92.8%と完全増殖系に近い細胞動態が示された.
MMC 1mg/kg, 照射500rads/mouseの併用療法では, その抗腫瘍効果は照射先行の方がMMC先行より優れた相乗効果が認められたが,体重・脾重量減少でみた副作用の相乗効果は示されなかった.細胞動態の解析では, MMC,照射ともその低用量でS期の延長がみられ,さらにこの延長したS期細胞群はG1→ S blockを伴なわない放射線治療群の方がやや多く,照射先行による併用療法の相乗効果増強の一因と考えられた.更に各種治療法の併用効果判定と機序解明のためには細胞動態の実験的解析が有用と考えられた.

キーワード
実験的化学・放射線併用療法, ヌードマウス可移植性ヒト乳癌株(MX-1)


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