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日外会誌. 84(3): 211-222, 1983


原著

ラット心による心筋保護液至適K濃度に関する実験的研究

北海道大学 医学部第二外科教室(主任田辺達三教授)

松浦 正盛

(昭和57年8月6日受付)

I.内容要旨
開心術中の心筋保護法としてPotassium cardioplegiaの有効性についてはほぼ異論のないところである.
しかし心筋保護液中のK+の至適濃度に関してはまだ明確な結論は得られていない.本研究では至適K+濃度の決定を研究目的として摘出ラット心を用い,液非酸素加,持続冠灌流の条件で常温群(灌流液温37℃), および低温群(4゜C冷却液) の一定条件下保存後の心機能について検討した.
60匹のDonryu ratを常温群と低温群の2群に大別し,それぞれについてBasic Modified Krebs液を基本液としたK+濃度(15,25,40,60,80,100mEq/L)の6種の液による実験群を作成し,各5匹について30分間灌流保存後の回復率をみた. Isolated working heart apparatusで血行動態は対照値(灌流前値) と再灌流5, 15, 30分後値とを測定し,それぞれの回復率で比較した.実験成績は常温群では心拍出量の回復率が全経過を通して40mEq/L群で有意に良好であり平均値は常に最高の回復率を示した.低温群では25,40,60mEq/L群が15, 80,100mEq/L群に比し有意に良好な回復率を示したが, 15,80,100mEq/L群でも常湿25mEq/L群に近い回復率であり心機能の面で安全域が広がることが認められた.
すなわちBasic Modified Krebs液を基本液とした保護液では常温におけるK+濃度は40mEq/Lが至適濃度と判定された.又低温では15-100mEq/Lの範囲で良好な回復率となるが,有意に良好な心機能の回復は25,40,60mEq/Lの液で得られる事を明らかにした.

キーワード
心筋保護法, Potassium Cardioplegia, 至適K濃度, Basic Modified Krebs液, Isolated working heart apparatus


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