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書誌情報]
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日外会誌. 84(3): 223-231, 1983
原著
腹部大動脈瘤手術症例における術中下腸間膜動脈断端血庄および術前大動脈造影像の検討
-術後大腸虚血に関して-
I.内容要旨今回我々は,非破裂性腹部大動脈瘤手術症例18例の,術前腹部大動脈造影所見および,術中測定値より求めた,平均下腸間膜動脈血圧/体循環血圧比(IMA/Syst. Pr. Ratio)を検討し,虚血性大腸炎の予知手段としての有用性,IMA結紮後の側副血行の関与,および末梢側血行再建の問題点を考察した.
全例において,IMAは血行再建せず,1例に虚血性大腸炎の発生を認めた.
術前腹部大動脈造影像において,回廊動脈が,上腸間膜大動脈より下腸間膜動脈の方向へ造影された症例には,虚血性大腸炎の発生がなく,虚血性大腸炎症例では,造影されなかったことより,術前に回廊勤脈とその血流方向を検討することは,有益と思われる.
IMA/Syst. Pr. Ratioは,17例において,大動脈血行再建後0.41~1.0(平均0.70)を示し,虚血性大腸炎症例は, 0.50と低く,本症例より低値を示す症例は1例のみであった.よつてIMA断端圧測定は,虚血性大腸炎の予知手段として有用であると思われる.
内腸骨動脈血行遮断中,解除後における, IMA/Syst.Pr. Ratioの変化と,術前大動脈造影像とから, IMA結紮後の側副血行の関与を検討すると, IMA開存例では,内腸骨動脈よりの側副血行に依存する症例があり, IMA閉塞例の大多数では,回廊動脈を介する側副血行に依存する傾向を認めた.すなわち,末梢側血行再建上,特にIMA開存例では, IMA断端圧を充分高く保つために,内腸骨動脈の温存が必要なことがあり,温存することで, IMA血行再建は不要になることが多いと思われる.
しかし,我々は,両側内腸骨動脈の温存が困難なために, この動脈を両側とも結紮した後もIMA/Syst. Pr. Ratioが充分高値を示したので, IMAも結紮した2症例を経験したが,術後経過に問題はなかった.この術式の是非を,直腸血行の面から,大動脈造影所見に文献的考察を加わえて論じた.
キーワード
腹部大動脈瘤, 下腸間膜動脈断端血圧, 虚血性大腸炎, 腹部大動脈造影, 大動脈血行再建
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