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日外会誌. 84(1): 63-73, 1983


原著

人工肝補助装置の開発
-ビリルビンおよび胆汁酸の除去を中心として-

聖マリアンナ医大 第1外科(指導:渡辺弘教授)

浜口 実

(昭和57年6月21日受付)

I.内容要旨
肝不全状態における血中有害物質の除去を目的とした人工肝補助装置の開発の一端として,陰イオン交換樹脂であるIONEXを用いてビリルビンおよび胆汁酸を中心とした吸着除去能を検討した. さらに体外循環において大きな障害となつている血小板凝集などの組織適合性に関して,prostagrandin(PG)を使用し血小板凝集阻止効果を検討した.
1)各種吸着剤におけるin vitroの比較実験にて,IONEXのビリルビン吸着能が,他剤に比して明らかに優れていることを明らかとした.
2)雑種成犬6頭を用いた黄疸犬の90分潅流実験にてIONEX使用量により差はあるが,最高49%(IONEX使用量70gr),最低9%(IONEX使用量24.1gr)のビリルビン除去能を得た.
3)Eck瘻を作製した肝不全モデル犬5頭の90分潅流実験では,IONEX使用量約70grで平均ビリルビン除去率は40%,胆汁酸除去率は平均61%を示した.
4)PGI2を使用した潅流実験では,ヘパリン量の減量(通常使用量の1/3-1/2)にても血栓形成はほとんどみられず,血小板数の減少も軽度であることが明らかとなつた.
5)重症黄疸患者7例に施行した体外循環にて血清ビリルビン除去率は平均21%,胆汁酸の除去率は31.2%を示し,PGI2の使用により安全な潅流を行えることを確認した.

キーワード
肝補助装置, IONEX, ビリルビン, 胆汁酸, Prostagrandins


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