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日外会誌. 84(1): 51-62, 1983


原著

胃癌リンパ節転移の血管像よりみた評価

東京医科大学 外科(指導:木村幸三郎教授)
愛知県がんセンター 放射線診断部(指導:木戸長一郎部長)
東京医科大学 外科

中山 正 ,   

(昭和57年6月2日受付)

I.内容要旨
胃のリンパ領域やリンパ節群は解剖学的に血管領域と密接な関係があること, 血管造影が胃奨膜面からの診断法であることを重視し,血管造影による転移リンパ節判定の正診性に関して検討した.対象は,手術所見,組織学的検索が十分明らかになされたn(+)胃癌50例の転移リンパ節164個で,手術時肉眼的転移を認め組織学的にも転移陽性のもの(以下,N• n群と省略)111個,組織学的検索によつてのみ転移陽性のもの(以下,n群と省略)53個である.方法は,胃癌取扱い規約による① ~⑭ の各リンパ節別に脈管および転移陽性所見を規定し,術前血管像と転移陽性リンパ節各々とをretrospectiveに検討,その結果,術前血管像において転移陽性所見を読影しえたものの数を,対象としたリンパ節全体の数に対する百分率(有所見率) として算出し, その有所見率の差異を個々のリンパ節,N ・n群とn群,n-number,腫瘍占居部位,組織学的壁深達度,主病巣組織型,壁内リンパ管侵襲有無の各因子から考察した.その結果,従来のリンパ節判定は,転移リンパ節による間接所見としての圧迫や硬化像を中心として判定されており, 具体的な隔性所見の分類や,関連血管の規定がなかったので,正診率は著しく低かつたが,本研究にてこれらの点を明らかにし,血管撮影による術前転移判定の診断基準を明確にすることにより,従来の読影による正診率を著しく上回る有所見率をうることができた.

キーワード
胃癌, リンパ節転移, 血管撮影


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